10代の睡眠の質や量がメンタルヘルスの維持やウェルビーイングにどのように影響するのか、最新の研究が注目されています。
メンタルヘルスとは?
世界保健機関(WHO)が「自身の可能性を認識し、日常のストレスに対処でき、生産的かつ有益な仕事ができ、さらに自分が所属するコミュニティに貢献できる健康な状態」と定義しています。
メンタルヘルス=心の健康、と訳されることもあります。
ウェルビーイングとは?
「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること」です。
個人の生活満足度や幸福感、目的意識など、幅広い要素を含んでいます。
子どもの頃、夜遅くまで起きてると、「早く寝なさい」とよく言われました。。
「寝る子は育つ」睡眠と成長は密に関わる報告は多くあり、子どもにとって睡眠は大切です。
寝る子は幸せに・・・?これを検証した最新研究を紹介します。
10代を対象とした睡眠とメンタルヘルス、そしてウェルビーイングとの相互作用についての複数の研究結果を統合したメタ分析結果が、2024年にBacaroらによって発表されました(※1)。
※1
Bacaro V, Miletic K, Crocetti E. A meta-analysis of longitudinal studies on the interplay between sleep, mental health, and positive well-being in adolescents. Int J Clin Health Psychol. 2024 Jan-Mar;24(1):100424. doi: 10.1016/j.ijchp.2023.100424.
この記事では、この研究について紹介します。
1. 10代のメンタルヘルスとウェルビーイングに重要なのは「長くて質のよい睡眠」
2. 良い睡眠はメンタルヘルスに、メンタルヘルスは良い睡眠につながる
3. 良い睡眠は主観的ウェルビーイングの向上につながる
4. 良い睡眠は心理的ウェルビーイング向上に、心理的ウェルビーイング向上は良い睡眠につながる
1. 10代のメンタルヘルスとウェルビーイングに重要なのは「長くて質のよい睡眠」
10代は、身体的にも精神的にも大きく成長する時期で、また環境の変化も多くあるため、不安定な状態を経験しすることもあります。時には、不安定な状態によって、精神的な安定や幸福感が妨げられることもあります。
この10代の時期に、体と心の健全な発達をサポートすべく、メンタルヘルスを保ち、そしてウェルビーイングな状態であることはとても重要です。
この研究は、10代におけるメンタルヘルスとウェルビーイングと、睡眠について検証しています。
2. 良い睡眠はメンタルヘルスに、メンタルヘルスは良い睡眠につながる
今回紹介する研究は、「睡眠がメンタルヘルスやポジティブなウェルビーイングにどのように影響するのか」を明らかにするために行われました。
この研究では、10歳から19歳の男女の縦断的な研究を対象に、どのように睡眠がメンタルヘルスに影響を与え、またその逆も考えられるのかを探っています。
2023年1月までに公開された臨床研究を精査するシステマティックレビューののち、42の文献がメタアナリシスの対象とされ、青少年の睡眠と精神的健康、幸福感との関係性についての詳細な分析(※2)が行われました。
※2 メタ分析:
ピアソンの相関、異質性(Q統計量とI²)、モデレーター分析、ファンネルプロットとEggerの検定(出版バイアス)
・評価因子
睡眠:睡眠時間の長さ、睡眠の質の高さ、不眠症状の少なさ
メンタルヘルス:内在化症状(うつ病、不安症状など)、外在化症状(注意力欠如、行動障害など)
分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、メンタルヘルスの内在化症状( r = -.20、p < .001)と外在化症状( r = -.15、p < .001)と有意な負の相関関係があることが分かりました。良い睡眠がメンタルヘルスにおける症状改善につながる可能性を示しています。これらは、双方向性があることも確認され、メンタルヘルスにおける症状改善が良い睡眠につながる可能性も同様に示されています。
3. 良い睡眠は主観的ウェルビーイングの向上につながる
睡眠:睡眠時間の長さ、睡眠の質の高さ、不眠症状の少なさ
主観的ウェルビーイング:肯定的および否定的な感情、生活満足度
メタ分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、時間経過とともに主観的ウェルビーイングの向上(r = .18、p < .001)と有意な正の相関関係を示しました。
良い睡眠が、主観的ウェルビーイングの向上につながる可能性が示唆されました。
4.良い睡眠は心理的ウェルビーイング向上に、心理的ウェルビーイング向上は良い睡眠につながる
睡眠:睡眠時間の長さ、睡眠の質の高さ、不眠症状の少なさ
心理的ウェルビーイング:自己コントロール、自尊心、回復力など
分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、時間経過とともに心理的ウェルビーイングが向上すること( r = .15、p < .001)と有意な正の相関があることが分かりました。
良い睡眠が、心理的ウェルビーイングの向上につながる可能性を示しています。
双方向性についても確認され、心理的ウェルビーイングの向上が、良い睡眠につながる可能性も示唆されました。
幸福感は、人生の満足度やポジティブな感情の経験に直接関係しており、良質な睡眠を確保することで、その後の生活の質を大きく向上させることが可能です。
最後に
今回の研究は、10代のメンタルヘルスやウェルビーイングを考える上で、睡眠がいかに重要であるかを改めて示しています。
良い睡眠がもたらすメンタルヘルスとウェルビーイングは、10代の成長期において欠かせない要素です。
今後の研究では、さらに具体的な介入方法や対策が期待されます。
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