青少年にとって良い睡眠は、精神的健康やウェルビーイング(幸福感)の向上につながる

ウェルビーイング

青少年の睡眠の質や量が精神的健康やウェルビーイング(幸福感)にどのように影響するのか、最新の研究が注目されています。

子どもの頃、夜遅くまで起きてると、「早く寝なさい」とよく言われました。。
「寝る子は育つ」睡眠と成長は密に関わる報告は多くあり、子どもにとって睡眠は大切です。

寝る子は幸せに・・・?これを検証した研究を紹介します。

10代の青少年に対する睡眠と精神的健康、そしてウェルビーイングとの相互作用についての複数の研究結果を統合したメタ分析結果が、2024年にBacaroらによって発表されました(※1)。
※1
Bacaro V, Miletic K, Crocetti E. A meta-analysis of longitudinal studies on the interplay between sleep, mental health, and positive well-being in adolescents. Int J Clin Health Psychol. 2024 Jan-Mar;24(1):100424. doi: 10.1016/j.ijchp.2023.100424.

この記事では、この研究について紹介します。

1. 青少年の精神的健康とウェルビーイングに重要なのは「長く、質のよい睡眠=”良い睡眠”」

10代は、身体的にも心理的にも大きく成長する時期で、また環境の変化も多くあるため、不安定な状態を経験しすることもあります。時には、不安定な状態によって、精神的な安定や幸福感が妨げられることもあります。

この10代の時期に、体と心の健全な発達をサポートし、精神的な健康状態を保ち、そしてウェルビーイングな状態になれるか?はとても重要です。

この研究は、精神的な健康とウェルビーイングには「長く、質の良い睡眠=”良い睡眠”」が関わるのではないか?これを検証しています。

2. 良い睡眠は精神的健康に、精神的健康は良い睡眠につながる

今回紹介する研究は、「睡眠が精神的健康やポジティブなウェルビーイングにどのように影響するのか」を明らかにするために行われました。この研究では、10歳から19歳の青少年男女の縦断的な研究を対象に、どのように睡眠が精神的健康に影響を与え、またその逆も考えられるのかを探っています。

2023年1月までに公開された臨床研究を精査するシステマティックレビューののち、42の文献がメタアナリシスの対象とされ、青少年の睡眠と精神的健康、幸福感との関係性についての詳細な分析(※2)が行われました。
※2 メタアナリシスでの分析方法:
ピアソンの相関、異質性(Q統計量とI²)、モデレーター分析、ファンネルプロットとEggerの検定(出版バイアス)

評価因子

睡眠:睡眠時間が長さ、睡眠の質が高さ、不眠症状の少なさ(※3)
精神的健康:内在化症状(うつ病、不安症状など)、外在化症状(注意力欠如、行動障害など)
※3 後述の睡眠の因子は同じ

分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、精神的健康の内在化症状( r  = -.20、p < .001)と外在化症状( r  = -.15、p < .001)と有意な負の相関関係があることが分かりました。良い睡眠が、精神的健康の症状改善につながる可能性を示しています。これらは、双方向性があることも確認され、精神的健康の症状改善が、良い睡眠につながる可能性も同様に示されています。



3. 良い睡眠は主観的ウェルビーイングの向上につながる

評価因子

睡眠
主観的ウェルビーイング:肯定的および否定的な感情、生活満足度

分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、時間経過とともに主観的ウェルビーイングの向上(r = .18、p < .001)と有意な正の相関関係を示しました。良い睡眠が、主観的ウェルビーイングの向上につながる可能性が示唆されました。

4.良い睡眠は心理的ウェルビーイング向上に、心理的ウェルビーイング向上は良い睡眠につながる

評価因子

睡眠
心理的ウェルビーイング:自己コントロール、自尊心、回復力など

分析の結果、睡眠時間が長いこと、睡眠の質が高いこと、不眠症状の少ないことは、時間経過とともに心理的ウェルビーイングが向上すること( r  = .15、p < .001)と有意な正の相関があることが分かりました。良い睡眠が、心理的ウェルビーイングの向上につながる可能性を示しています。双方向性についても確認され、心理的ウェルビーイングの向上が、良い睡眠につながる可能性も示唆されました。

幸福感は、人生の満足度やポジティブな感情の経験に直接関係しており、良質な睡眠を確保することで、その後の生活の質を大きく向上させることが可能です。

最後に
今回の研究は、青少年の精神的健康やウェルビーイングを考える上で、睡眠がいかに重要であるかを改めて示しています。良い睡眠がもたらす精神的健康と幸福感の向上は、青少年の成長期において欠かせない要素です。今後の研究では、さらに具体的な介入方法や対策が期待されます。



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