①まなびの目標🎯を理解し、使われる場面をイメージしましょう。
②最後の確認クイズ💡で、学んだことをしっかりチェックしましょう。
まなびの目標🎯
・データベースがなぜ大切で、どのような場面で役立つのかを理解する。
・たくさんの情報を整理するリレーショナルデータベースの仕組みを理解する。
・データベースと情報をやり取りする言語SQLの基本(SELECT、FROM、WHERE)を習得する。
1. データベースとは何か?
2. なぜデータベースが必要か?
3. リレーショナルデータベースの基礎
3.1 表の構成要素:レコードとフィールド(行と列)
3.2 データを一意に識別:主キー
4. SQLとは何か?
5. SQLでデータを検索する
5.1 基本の命令:SELECT と FROM
5.2 条件を指定:WHERE句による絞り込み
6. データベースの活用事例
7. まとめ
8. 確認クイズ
1. データベースとは何か?
スマートフォンに入っている連絡先、図書館にある本のリスト、ネットショップの商品一覧など、これらはすべて、たくさんの情報(データ)が集まったものです。
このように多くの情報を使いやすく、効率的に整理し、必要な時にすぐに取り出せるように保管しておくための仕組みが、データベースです。
図書館で特定の本を探す際、本の名前や作者名ですぐに検索できるのは、本の情報がデータベースにきちんと整理されているからです。
(身の回りのデータベースの例:音楽配信サービスの楽曲リスト、オンラインゲームのユーザーデータ、気象庁の観測データなど)
2. なぜデータベースが必要か?
「情報を整理するだけなら、Excelのような表計算ソフトでも十分ではないか」と考える人もいるかもしれません。確かに、少量の情報であれば表計算ソフトも非常に便利です。しかし、扱う情報量が膨大になったり、複数の人が同時に情報を利用したり、そして何よりもデータの正確さや安全性が非常に重要になったりする場面では、ただ情報を記録するだけでは不十分です。。
大量のデータはデータベースに保存され、データベース管理システム(DBMS:Database Management System)で効率的かつ安全に管理・運用されています。
DBMSとは、データベースを作成し、利用し、そして安全に維持・管理するための専門のソフトウェアのことです。私たちが直接データベースのファイル(データ)を触るのではなく、このDBMSを通してデータベースにアクセスし、様々な操作を行います。DBMSがあるおかげで、私たちは複雑なことを考えなくても、簡単かつ安全にデータベースを利用できるのです。(有名なDBMSには、MySQL、PostgreSQL、Oracle Database、Microsoft SQL Serverなどがあり、この記事でPythonと連携して使うSQLiteも、ファイルベースで手軽に使えるDBMSの一種です。)
◆DBMSが支える!データベースの重要な特性とメリット
・データの独立性 (Independence):
データベースの内部構造(データの保存方法など)が変わっても、利用するプログラムへの影響を最小限に抑える仕組みです。これにより、システムの変更や改良がしやすくなります。
・データの一貫性 (Consistency) と 整合性 (Integrity):
データが常に矛盾なく正しい状態(一貫性)で、かつ、決められたルール通りに正確な値(整合性)として保たれることです。DBMSは、データの入力チェックや関連データの自動更新などを通じて、データの信頼性を守ります。
・データの機密性 (Confidentiality / Security):
許可された人だけが情報にアクセスでき、不正な閲覧や改ざんからデータを保護することです。DBMSは、IDやパスワードによる利用者確認や、操作権限の管理機能でデータの安全を守ります。
・データの可用性 (Availability):
システム障害が発生してもデータが失われず、必要な時にいつでもデータを利用できる状態を保つことです。DBMSは、バックアップや障害からの復旧機能により、安定したデータ利用を支えます。
◆その他の特徴的な機能
・高速なデータ検索:大量のデータの中からでも、必要な情報を素早く見つけ出せます。
・複数ユーザーによる同時利用:多くの人が同時にアクセスしても、データの矛盾が起きないように管理します。
このようにDBMSが提供する様々な機能によって、データベースは単なる情報の入れ物ではなく、信頼性が高く、効率的にデータを管理・活用するための強力なシステムになっています。現代社会において、DBMSとデータベースは情報を支える上で非常に重要な役割を担います。
3. リレーショナルデータベースの基礎
データベースには様々な種類がありますが、現在最も広く利用されているのがリレーショナルデータベース (RDB)と呼ばれるタイプです。この方式では、情報を表(テーブル)の形で整理・管理します。
表計算ソフトの表と似た形式ですが、リレーショナルデータベースではより厳密なルールに基づいてデータが構造化され、効率的かつ整合性を保ったデータ管理が可能になります。
3.1 表の構成要素:レコードとフィールド(行と列)
リレーショナルデータベースの表は、主に以下の要素で構成されます。
・行 (レコード):一件分のデータを表します。例えば、生徒名簿という表であれば、生徒一人ひとりの情報が一行(一レコード)に相当します。
・列 (フィールド または カラム):データの項目を表します。生徒名簿であれば、学籍番号、氏名、クラス、といった項目がそれぞれ一列(一フィールド)に相当します。
以下の部員名簿表の例をご覧ください。
この表では、各行が部員一人の情報(レコード)であり、部員IDや氏名などがデータの項目(フィールド)です。
3.2 データを一意に識別:主キー
表内の多数のデータ(レコード)の中から、特定のレコードを一意に識別するために非常に重要な役割を果たすのが主キー (Primary Key)です。
一意に識別・・・とは、間違いなくこれ一つだけを選ぶことができる!重複がない!ことです💡
主キーは、各レコードを他と重複することなく、ただ一つに特定するための特別なフィールドとして定義されます。これは、スポーツ選手の背番号のように、各選手を区別するための一意な番号に例えることができます。
📢 主キーの主な制約(ルール)
・一意性制約 (Unique):主キーの値は、同じ表の中で重複してはいけません(例:同じ学籍番号を持つ生徒は存在しない)。
・非NULL制約 (NOT NULL):主キーの値は、必ず設定されている必要があり、空(NULL)であってはいけません。
先の部員名簿表の例では、部員IDが主キーとして適しています。氏名は同姓同名の可能性があるため主キーには向きませんが、部員IDは各部員を一意に識別できます💡
※複数のキーで主キーとなるキーを複合キーと呼びます!例えば、学年+出席番号で”一意に識別できる”場合、など。
4. SQLとは何か?
データベースに情報を格納したり、検索したり、更新したりするためには、データベースと「対話」するための共通言語が必要です。そのための専用言語が、SQL (エスキューエルまたはシークェル) です。
SQLは「Structured Query Language(構造化問い合わせ言語)」の略称で、リレーショナルデータベースを操作するための標準的な言語として広く利用されています。
クエリ (Query)とは、問い合わせや質問といった意味です。SQLを用いることで、データベースに対して「このような情報が欲しい」という要求を伝えることができます。
リレーショナルデータベースのキホン操作:選択・射影・結合
SQLを学ぶ前に、リレーショナルデータベースで情報を取り出すときの基本的な考え方(操作の種類)を3つ知っておくと、SQLの理解がぐっと深まります。
・選択 (Selection):
表の中から、特定の条件に合う行(レコード)だけを選び出す操作です。例えば、部員名簿表から2年生の部員だけを取り出すようなイメージです。(SQLでは、主にWHERE句を使ってこの操作を行います。)
・射影 (Projection):
表の中から、必要な列(フィールド)だけを選び出す操作です。例えば、部員名簿表から氏名と部活動の列だけを取り出すようなイメージです。(SQLでは、主に SELECT句で取り出す列を指定することでこの操作を行います。)
・結合 (Join):
複数の表を、関連する列(例えば共通のIDなど)を使ってつなぎ合わせ、一つの大きな表のようにして情報を取り出す操作です。(SQLでは、主に FROM句で複数のテーブルを指定し、WHERE句や専用のJOIN句で結合条件を指定してこの操作を行います。)
SQLのSELECT文は、これらの選択、射影、そして結合の操作を組み合わせて、データベースから目的の情報を柔軟に取り出すことができる強力なツールなのです。
5. SQLでデータを検索する
それでは、SQLを使ってデータベースから情報を取り出す方法を具体的に見ていきましょう。
ここでは、先ほどの部員名簿 (club_members)表を例に、SQLの基本操作を学びます。
サンプル表:部員名簿 (club_members)
member_id | name | grade | club_name |
---|---|---|---|
101 | 山田 太郎 | 2 | サッカー部 |
102 | 鈴木 花子 | 1 | 吹奏楽部 |
103 | 佐藤 次郎 | 2 | サッカー部 |
104 | 伊藤 さくら | 3 | 美術部 |
105 | 高橋 健太 | 1 | サッカー部 |
5.1 基本の命令:SELECT と FROM
データを取り出す際の基本的なSQL文の形式は以下の通りです。
SELECT 表示したい列名 FROM 表名;
SELECTの後には取得したいデータの項目(列、フィールド名)をカンマで区切って記述します。表の全ての項目を取得したい場合は、アスタリスク* を使用します。
FROMの後にはどの表からデータを取り出すか(表名)を指定します。SQL文の最後にはセミコロン ; を記述するのが一般的です(環境によっては省略可能な場合もあります)。
例1:部員名簿 (club_members)から氏名(name)と部活動(club_name)の列だけを取り出す
SELECT name, club_name FROM club_members;
実行結果イメージ:
name | club_name |
---|---|
山田 太郎 | サッカー部 |
鈴木 花子 | 吹奏楽部 |
佐藤 次郎 | サッカー部 |
伊藤 さくら | 美術部 |
高橋 健太 | サッカー部 |
例2:部員名簿 (club_members)の全ての情報を取り出す
SELECT * FROM club_members;
実行結果イメージ: 上記のサンプル表全体が表示
5.2 条件を指定:WHERE句による絞り込み
特定の条件に合致するデータだけを取得したい場合には、WHERE句を使用します。
WHERE
の後には絞り込みたい条件式を記述します。
SELECT 表示したい列名 FROM 表名 WHERE 条件式;
例3:部員名簿 (club_members)からサッカー部の部員の情報だけを取り出す
SELECT * FROM club_members WHERE club_name = 'サッカー部';
💡文字列データを条件として指定する場合は、通常シングルクォーテーション”か、ダブルクオーテーション””で囲みます。)
実行結果イメージ:
部員ID | 氏名 | 学年 | 部活動 |
---|---|---|---|
101 | 山田 太郎 | 2 | サッカー部 |
103 | 佐藤 次郎 | 2 | サッカー部 |
105 | 高橋 健太 | 1 | サッカー部 |
例4:「部員名簿」から「1年生」で、かつ「サッカー部」の部員の情報を取り出す
複数の条件を組み合わせる場合は、AND
(両方の条件を満たす)や OR
(どちらかの条件を満たす)といった論理演算子を使用します。
SELECT * FROM club_members WHERE grade = 1 AND club_name = 'サッカー部';
実行結果イメージ:
部員ID | 氏名 | 学年 | 部活動 |
---|---|---|---|
105 | 高橋 健太 | 1 | サッカー部 |
このように、SQLを使うことで、必要な情報だけを取り出すことができます。
6. データベースの活用事例
皆さんが日常的に利用しているスマートフォンアプリやインターネットサービス、店舗の販売システムなど、現代社会の様々な場面でデータベースが活用されています。
データベースの主な活用例
- ソーシャルネットワーキングサービス (SNS):ユーザーアカウント情報、投稿内容、友人関係、メッセージ履歴などを管理。
- オンラインショッピングサイト:膨大な商品情報、在庫状況、顧客の注文履歴、配送情報などを管理。
- 金融機関のシステム (ATMなど):口座情報、取引履歴、残高などを正確かつ安全に管理。
- 図書館の蔵書管理システム:書籍情報、貸出・返却状況、利用者情報などを管理。
- 教育機関の学籍・成績管理システム:生徒・学生情報、履修科目、成績、出欠状況などを管理。
- 気象情報サービス:過去の気象データや最新の観測データ、天気予報データなどを蓄積・提供。
データベースは、大量の情報を効率的かつ安全に管理し、私たちの生活を支える重要な役割を担っています。
💡SQLを実際使ってみる、という記事も後日アップ予定です!
7. まとめ
今回は、大量の情報を整理・活用するためのデータベースの基本的な概念と、その中でも広く使われているリレーショナルデータベース、そしてデータベースを操作するための言語SQLについて学習しました。
・データベースは、多くの情報を効率的に、そして安全に管理・利用するための仕組みです。
・リレーショナルデータベースでは、情報を表の形式で整理し、行(レコード)と列(フィールド)を用いてデータを扱います。
・各データ(レコード)を一意に識別するための主キーは非常に重要な概念です。
・データベースから特定の情報を取り出すためには、SQLを使用します。
・SELECT 列名 FROM 表名 WHERE 条件式;が、SQLでデータを検索・抽出する際の基本的な構文です。
データベースとSQLの基礎を理解することは、情報を効果的に活用する上で非常に役立ちます。
8. 確認クイズ
Q1. データベースの主な役割として、最も適切なものはどれですか?
- コンピュータを動かすための基本的なプログラム
- インターネットで情報を検索する技術
- たくさんの情報を整理して、必要な時に取り出しやすくする仕組み
正解!
不正解!
たくさんの情報を整理して、必要な時に取り出しやすくする仕組み
ヒント:多くのデータを効率よく扱うための「情報の保管庫」のようなものです!
Q2. リレーショナルデータベースの表において、「レコード」とは何を表しますか?
- 1件のデータのこと(行)
- データの項目のこと(列)
- 表全体のこと
正解!
不正解!
1件のデータのこと(行)
ヒント:例えば、クラス名簿なら生徒一人ひとりの情報がこれにあたります。
Q3. 表の中の「主キー」が持つ最も重要な役割は何ですか?
- 各レコードを他と区別なくまとめて扱うための番号
- データの内容を説明するための補足情報
- 各レコードを一意に識別するための、重複しない特別な項目
正解!
不正解!
各レコードを一意に識別するための、重複しない特別な項目
ヒント:各データに付けられた、ただ一つの「背番号」のようなものです!
Q4. SQLとは、主に何をするためのものですか?
- リレーショナルデータベースに指示を出し、データを操作するための言語
- コンピュータの動作速度を上げるためのプログラム
- データを新しくウェブページに表示する命令
正解!
不正解!
リレーショナルデータベースに指示を出し、データを操作するための言語
ヒント:データベースと「対話」するための標準的な言葉です!
Q5. 部員名簿 (club_members)表から氏名 (name)の列を取り出すための正しいSQL文はどれですか?
- FROM club_members SELECT name;
- SELECT name WHERE club_members;
- SELECT name FROM club_members;
正解!
不正解!
SELECT name FROM club_members;
ヒント:「何を取り出すか(SELECT)」を最初に指定し、「どの表から(FROM)」が続くのが基本形です!
確認クイズは、いかがでしたでしょうか?今回の学習内容が、皆さんの情報活用能力を高める一助となれば幸いです。閲覧いただき、ありがとうございました!
※本記事 教科書該当範囲
教科書名 | 該当章 |
新編情報Ⅰ(東京書籍) | 4章 37. データベースの活用, 38.さまざまなデータモデル |
最新情報I(実教出版) | 第5章 2節 データの活用5 |
高校情報ⅠJavaScript(東京書籍) | 第4章 21. 情報システムを支えるデータベース, 22. データベースの仕組み |
高校情報ⅠPython(東京書籍) | 第4章 23. 個人による安全対策, 24. 安全のための情報技術 |
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