ウェルビーイグ 精神的状態が身体的状態に影響を与える 心疾患に関する文献紹介

ウェルビーイング

Well-being(ウェルビーイング)とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを言います。
「身体的に良好である」、「精神的に良好である」、「社会的に良好である」、これらは独立したことではなく、相互に関わり合うと考えられています。
今回読んだ論文は、「精神的」状態が「身体的」状態に影響を及ぼすことについて主に報告されていました。

2021年に、the American Heart Association(米国心臓協会)より、以下の文献が投稿されています。
心疾患の発症が、心理的健康に悪影響を及ぼす可能性についての報告がある一方で、
心理的健康が、心疾患の発症に影響を及ぼす報告もあります。
主に後者について、本文献よりピックアップしたいと思います。
Levine GN, Cohen BE, Commodore-Mensah Y, Fleury J, Huffman JC, Khalid U, Labarthe DR, Lavretsky H, Michos ED, Spatz ES, Kubzansky LD. Psychological Health, Well-Being, and the Mind-Heart-Body Connection: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2021 Mar 9;143(10):e763-e783. doi: 10.1161/CIR.0000000000000947.

Just a moment...

■心理的健康にネガティブであることが、心疾患系の発症リスクを増加させた例
・仕事に関連したストレスは心血管疾患(CVD)の発症リスクを40%増加させた(リスク比※1(RR), 1.4 [95%CI , 1.2–1.8])
・社会的孤立や孤独感がCVDリスクの上昇に関連し、CVDイベントのリスクを50%上昇させた(RR、1.5[95%CI、1.2-1.9])
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)は冠状動脈性心疾患(CHD)のリスクを61%増加させた(ハザード比(HR)※2、1.61[95%CI、1.46-1.77])
・敵意や攻撃性の程度が高いほど、55歳時点でのCVDやCHDの発症率が高いことが予測された
・不安は高血圧、過剰脂肪、喫煙の危険因子であり、動脈硬化を促進する可能性がある
※1 リスク比(Risk Ratio, RR):特定の要因がある場合とない場合の2群の発生確率の比率を示す
※2 ハザード比(Hazard Ratio, HR):特定の要因がある場合とない場合の2群の時間とともに変化するハザード(危険)の比率を示す

■心理的健康にポジティブであることが、心疾患系の発症リスクを低減させた例
・楽観的な考え方は、脳卒中や心不全を含むCVDや心不全のリスクの低下、全死亡リスクの低下と関連することが複数の研究で示されている
・生きがいを強く感じることは、CVDイベント(RR, 0.83[95% CI, 0.75-0.92])と全死亡(RR, 0.83 [95% CI, 0.75-0.92])の両方のリスクを17%減少させた
・人生の目的意識の高さは、心血管の健康、長寿、CVDリスクの低下(心筋梗塞と脳卒中のリスク低下を含む)と関連した
マインドフルネス(目の前のことに注意をむける状態)は、ストレスの軽減、情熱の向上、幸福度の向上と関連した
・心理的論理的幸福度が高い高齢者ほど、8年間の追跡調査期間中、3つの時点のそれぞれで良好な心血管健康状態(非喫煙者であること、糖尿病がないこと、血圧、コレステロール、肥満度が健康的であることと定義される)を維持する可能性が高かった
・感謝による介入(例えば、感謝日記)を評価した小規模臨床試験では、血圧、睡眠、炎症性バイオマーカー、心拍変動の改善が示唆された

心理的負荷によって、血小板凝集や炎症亢進が起こる、あるいは、視床下部-下垂体-副腎軸の活性化による自律神経の調節不全が生じる、などが分かっており、CVDリスクの増大へとつながると考えられており、上記の事例についての根拠の一つと考えられています。
病気になることで精神的に落ち込むことは実生活からも体感できますが、その逆、「病は気から」は、このように臨床試験でも多くエビデンスが報告されています。
さらに、精神的状態と身体的状態の双方向の影響についての記述もあり、引き続きウェルビーイングの精神的状態と身体的状態の相互の関わりについて学んでいきたいと思います。




コメント

タイトルとURLをコピーしました